KENNY 特別エッセイ

 

「ああ宮城県」再録音によせて

ああ宮城県
「ああ宮城県」吉川団十郎
(当時のシングルジャケット)

 1976年に発売され、当時10万枚の全国ヒットになった吉川団十郎さんの「ああ宮城県」は、三味線をニューミュージックに組み込み、ドドンパのリズムを使い、「ダンダンズビズビズバダ」というスキャットのリフレインを大胆に取り入れた斬新なアイディアが満載の名曲です。

 その思い出と、リメイクまでのいきさつを、こちらでご紹介いたします。少し長めのエッセイですが、お付き合い下さい。

 

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● 団十郎ファンになる ●

 1965年1月生まれの僕が当時小学生だった頃の話です。ある日、弟に「面白い曲を聴いたよ。レコード買おうよ」と言われ「ああ宮城県」を知ったのでした。

 その頃、仙台市に住んでいた僕は、自分の住んでいる宮城県が楽しいビートに乗って歌われる事が嬉しく、大ファンになり、その後数年間は団十郎さんのLP「陽陰者」「田舎者」、著書「田舎者に捧げる本」、団十郎さんのDJで大人気だったラジオ番組「ジャンボリクエストA.M.O.」「東京だよ団十郎」などを聴き、読み、ラジオに投稿し、大きな影響を受けました。ファンクラブにも入り、コンサートにも行きました。

LPと本
左からLP「陽陰者」、LP「田舎者」、
右は単行本「田舎者に捧げる本」

 団十郎さんが俳優として出演した菅原文太主演の映画「トラック野郎・望郷一番星」も映画館に見に行きました。そしてラジオの公開録音があれば行きました。

 特にラジオのDJとしての人気はもの凄く、当時全国DJ人気コンテストで第3位に選ばれるほどで、僕等も団十郎さんのラジオがあった次の日は、学校に行くとまずそのラジオの内容の話から始まる、というくらいの影響力がありました。

 中学に入学し、自己紹介で「吉川団十郎のファンです」と言った奴と親友になり、そいつと2人でクラス全員の前で団十郎さんの「仙台の女(ひと)」を歌ったり、中学を卒業して東京に行くと決めた時にお別れ会でギターを弾きながら「田舎者」を歌ったりと、団十郎さんには多くの青春時代の思い出があります。


● ああ宮城県 ●

「ああ宮城県」の話に戻りますが、僕は小学校の先生に許可を貰い、6年生の修学旅行にラジカセを持って行きました。持って行ったカセットはただ1本だけ。吉川団十郎さんのシングル「ああ宮城県」とライヴLP「陽陰者」が入ったカセットです。僕には確信がありました。「絶対ウケる」と。

 修学旅行のバスでやる事と言ったら、ガイドさんの観光案内の他は、みんなで歌を歌ったり簡単なゲームをするだけです。そこに取り出した団十郎さんのカセット!楽しい曲と仙台弁のMCにドッカンドッカン受けまくり、僕はクラス全員の希望で、何度も何度も「ああ宮城県」を巻き戻しさせられる事になりました。

 そして修学旅行の帰りのバスでは、クラス全員が完全に歌詞を覚え、何度も大合唱になったのです。バスガイドさんもすっかりこの曲を気に入り「それではもう一度、ああ宮城県をみんなで歌いましょう!」と言うほどでした。

ああ宮城県

 修学旅行から帰ってきてからも、放送部の友達に「給食の時間にかけたいからレコード貸して」と言われて学校に持って行き、お昼の放送で「次の曲は吉川団十郎さんの『ああ宮城県』です」とアナウンスが流れると、歓声と拍手が上がるほどでした。

 きっと当時のクラスメイトは6年生の頃の思い出の中に「ああ宮城県」も含まれているはずです。

 僕は団十郎さんのレコードならLPもシングルも全部持っていましたが、「ああ宮城県」はこんな風に特別な思い出のある曲なのです。


● 団十郎さんとの交流 ●

 団十郎さんは熱心にハガキを投稿していた僕の事を憶えてくれて、僕が中学生の頃に何度か僕の家まで会いに来てくれた事があります(最近団十郎さんにその事を聞いたら「色んなファンの家に行ったよ。北海道まで行った事があるよ。突然行くとファンの子は驚くけど、そういうのが大好きなんだ」と言っていました)。

 いつでも遊びに来ていい、と団十郎さんが言ってくれたので、ラジオを聴いていた友達に「団ちゃん(当時リスナーは愛情を込めて「団ちゃん」と呼びました)の家に一緒に遊びに行こうよ」と何人か誘ったのですが、友達は気後れしたようです(今考えると、当時団十郎さんは青少年の大スターだったのでビビッたのでしょうね)。

 団十郎さんは自ら芸能界を去った後もファンの熱烈な要望でDJをしていましたが、その後は新たな道を目指すためラジオを降板、僕も1980年に音楽をやりたくて上京し、長らく音信不通になりました。たまに偶然にラジオで団十郎さんのDJを聴いたり、テレビで見たりして近況を知る程度で、僕からも特に連絡はしていませんでした。


● WEBでの再会 ●

 インターネットが普及し始めた頃、何気なく団十郎さんの名前で検索してみたら、何と団十郎さんは自ら手がけるサイトを立ち上げていました。嬉しさと懐かしさですぐにメールを出したら、僕の事を憶えていてくれて、それからまた交流が始まりました。

 僕は当時小中学生、団十郎さんも20代の若者でしたが、再会した時は僕も30代後半、団十郎さんも50代半ばになっていました。しかし当時送られてきたハガキを自宅に持ち帰り、投稿者のリストを作るという恐るべきパワーを持ったDJ・歌手と、そのパワーに魅せられたファンは、そんな空白の時間など一瞬で吹き飛ばす程の絆で結ばれていたのでした。


● そして再録音へ ●

 団十郎さんの新曲のレコーディング・エンジニアやミキシング、プロデュースを担当するようになったのですが、ある日、団十郎さんが「未だに『ああ宮城県』が欲しいという人が多いんだ。昔のヴァージョンはヤマハに権利があって俺の独断では出せないんだけど、新しくレコーディングしたのだったら著作権協会に申請すれば自主制作で発売できるんだ」と言いました。

 僕は即座に「俺にやらせて!」と言いました。「ああ宮城県」のリメイクは、僕がこの世で一番の適任だと思ったのです。その時には団十郎さんも僕の作品を聴いてくれていて、僕の曲やアレンジや演奏に対して「凄くいい!」と気に入ってくれていたので、その場で「ああ宮城県」を僕に任せてくれる事になりました。

 

 アレンジは、原曲のイメージを最大限に生かした上で、原曲よりも少しゴージャスに、そしてドドンパのリズムを強調して仕上げました。「自分ならこういう『ああ宮城県』だったらリメイクでも納得できる」という仕上がりになるように心がけました(余談ですが、リメイクというのは原曲を越えられない事がとても多いのです。つまらないリメイクを僕も今まで沢山聴いてきました)。

 歌のレコーディングが終わり、ミキシングをしてプレイバックが終わった時、団十郎さんがヘッドホンをしたまま「昔の『ああ宮城県』よりずっといい。これなら自信を持って発売できる!」と言いました。この言葉が僕にとって、どれだけ嬉しかった事か。

 スタジオにて
団十郎さん自宅スタジオにて

● 母ちゃん ●

 他に、LP「陽陰者」のラスト・ナンバーとして歌われている名曲「母ちゃん」も収録される事になりましたが、これは団十郎さんがお母さんの命日にギター1本で歌って録音されたテイクに、僕が2本のギターとベースを加え、少しだけキーボードとパーカッションを加えてミキシングしたものです。団十郎さんがギターの弾き語りをした時の録音は、団十郎さん宅に取材に来ていたテレビ局のスタッフが担当しました。

 団十郎さんはギター1本のテイクのまま発表しようとしていたようで、僕の判断で勝手に楽器をダビングしたのを気に入って貰えるか心配だったのですが、完成テイクのCDを送ったら絶賛してくれて収録される事になりました。

 リズムが少し揺れているのは元々ガイドになるテンポがないからですが、良い雰囲気に仕上がったと思います。

「母ちゃんの話」はライヴの時のテイクを使用していますが、会場大爆笑でさすが全国DJ人気投票3位!という感じです。


● 現代の「ああ宮城県」 ●

「ああ宮城県」は楽しいリズムの中に、環境問題の事も含んだ名曲です。当時20代の若者だった団十郎さんが歌った「ああ宮城県」もハツラツとしていいのですが、曲が出来てから30年後、55歳になった団十郎さんが歌う「ああ宮城県」も素晴らしいです。これぞ、現代の「ああ宮城県」です。

 少年時代に大ファンだったミュージシャンの名曲に関われるという人は、あまり多くないと思います。「音楽やってて良かったなァ〜」と幸運を噛みしめつつ、団十郎さんと同じく、お酒が飲めない僕はコーラで乾杯!

 新しい「ああ宮城県」を、どうぞお楽しみ下さい。


吉川団十郎「ああ宮城県」発売中

おかげさまで全ての収録曲が色々なラジオやテレビでオンエアされました。放送局のスタッフの皆様に感謝いたします。ありがとうございました。


これを聴いてドドンパを踊ろう!

宮城の吉川団十郎「ああ宮城県(新録音)」絶賛発売中です。全曲KENNYプロデュース「ああ宮城県」「母ちゃん」はKENNY編曲・演奏です。ミキシングは全曲KENNYが担当しています。

★★ 収録曲 ★★

  1.「ああ宮城県」(2003年ヴァージョン)
  2.「通り雨」(新録音)
  3.「母ちゃんの話」(実況録音・大爆笑!)
  4.「母ちゃん」(新録音)
  5.「ああ宮城県」(カラオケ)
  6.「通り雨」(カラオケ)

● ご注文方法 ●

「住所・氏名・CDタイトルと枚数」を書いてこちらからお申し込み下さい(通販のみ・代金後払い・自主制作CD盤)。団十郎さんに直接のご注文となります(団十郎さんのサイトからです)。

CD代金(1枚) 1,000円 + 送料 200円= 1,200円

尚、オリジナルバージョンもキングレコードから発売中です。


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